広島OBが「今年のカープは本物じゃ」と口を揃える根拠のひとつが、投手陣の安定にある。チーム防御率3.18はリーグ1位。ドラフト1位・大瀬良の加入で厚みを増した先発陣もさることながら、「あのリリーフ陣は厄介。FA人的補償で巨人から入った一岡、6年目で成長著しい中田は6日の試合前まで防御率0.00。この2人に永川、抑えのミコライオを加えた勝ちパターンのリリーフはリーグ一でしょう」とライバル球団のスコアラーも警戒を強めている。
3─4で敗れた6日のヤクルト戦、その無失点コンビのひとり、中田が今季11試合目の登板で初失点を喫した。2─3と1点ビハインドの五回裏からマウンドに上がり、2イニング目の六回に安打と死球でピンチを広げ、ヤクルト5番の雄平に適時打を浴びた。
■横浜はリリーフ陣にもローテ制を導入
もちろん、一岡も中田も最後まで防御率0.00でいけるわけがない。問題は使い方だ。2人を含めたリリーフ陣を、ベンチがいかに負担をかけずに起用していくか。戦力の分厚い巨人との優勝争いを想定したとき、これがシーズン終盤に明暗を分けることになる、とみる専門家が多い。
中田が登板する直前、0─3の五回表に広島は2点を返した。野村監督にはここで中田を投入することで、打線のさらなる奮起を促す狙いがあったのだろうが、目先の1勝にこだわる起用は、特にリリーフ陣にはボディーブローのように後々に効いてくる。
98年に監督として横浜を日本一に導いた評論家の権藤博氏は、リリーフ陣にもローテーション制を導入。絶対的な抑えだった大魔神・佐々木の起用もセーブがつく場面のみと限定し、同点や負けている試合でも使いたくなるのを必死にこらえ、「監督の仕事は我慢することと知った。リリーフを無駄遣いしなかったからこそ優勝できた」と振り返っている。栄光は我慢の先にある。