■大一番も冷静「相撲やってよかった」
鶴竜は強く、たくましくなった。初の優勝、その先にある横綱昇進にとって重要となる千秋楽の大一番でも冷静に琴奨菊を寄り切った。「最後まで自分の相撲がとれた。相撲をやってきてよかった」。言葉の一つ一つに万感の思いが詰まっていた。
これまで2度賜杯に手が届きそうな好機があった。平成24年春場所は勝てば優勝が決まる千秋楽本割で豪栄道に敗れ、優勝決定戦で白鵬に屈した。今年初場所は本割で勝った白鵬に優勝決定戦で負け「これで悔しくなければ辞めた方がいい」と珍しく語気を強めた。
幾度もの悔しい思いが鶴竜を変えた。「関取になりたい」と入門した角界。努力を重ね、大関にまでなった。優勝に近づけば近づくほど欲が出てきた。支えてくれる周囲の期待に応えたい気持ちもあった。「このまま終わりたくない」
ジムにも通い、1年で体重は約10キロ増えた。すると、体格で勝る上位との立ち合いで当たり負けしなくなった。
2場所続けて、14勝と堂々とした成績を残した。白鵬に連勝し、今場所は日馬富士、稀勢の里とこれまで苦しめられた上位陣を圧巻の相撲で破った。念願の初優勝を果たし、「三度目の正直。こつこつやってきたことが結果として表れたのかな」と満足げな表情を見せた。
横綱昇進は確実。先に綱を張る白鵬、日馬富士をしのぐ存在感を発揮できるか。「横綱は勝って当たり前という存在。一生懸命頑張ります」と覚悟を示した。(藤原翔)