ロッテのドラフト5位ルーキーが注目を集めている。井上晴哉。身長180センチ、体重114キロ。球界の日本人最重量選手だ。
パワフルなスイングと、コースに逆らわずに打てる柔らかさを兼ね備えた右のスラッガーとして評価され、昨秋のドラフトで5位指名を受けて日本生命から入団した。
女子プロレスラーのアジャ・コングに似ていることから「アジャ」と呼ばれていること、ロッテのお菓子「パイの実」が大好物だとアピールしていること、今春の石垣島キャンプ中にはチームの先輩であるG・G・佐藤と相撲で対決したこと……など、これまで野球以外の話題が多かった。あまりにも野球以外の取材が殺到したため、伊東勤監督が井上を野球に専念させるべく、バラエティ色の強い取材を控えるように要望したほどだ。
だが、話題だけの選手ではないということを、本人が証明した。
3月20日の時点でオープン戦12試合に出場し、打率.412をマーク。伊東監督も「ここまでよく頑張ってくれている。可能性としては開幕で4番に座ることもある」と高く評価した。
それでも、井上は言った。
「一軍にいられるとは限らない。まずはアピールしないといけないと思っています」
言葉通り、その後のオープン戦でも好調をキープする。3月23日に神宮球場で行なわれたヤクルト戦では、二回にメジャー通算26勝の左腕・ナーブソンから左翼ポール際へ2試合連続となるソロ本塁打を放つなど、4打数3安打。これでオープン戦の打率が.435となり、首位打者となった。
オープン戦でルーキーが首位打者となるのは、1965年のドラフト制度導入後、初の快挙。これで、ロッテでは1950年の戸倉勝城以来となる新人の開幕4番の座を射止めた。
井上は、これまで常に4番を打ってきた。広島・崇徳高では1年秋から4番を打ち、高校通算31本塁打を放った。中央大学へ進むと、1年春の東都二部リーグ開幕戦で4番を打って以来、その座を守り続けた。1年秋に一部リーグに昇格し、2年秋には打率.359で首位打者を獲得。3年春はリーグトップの3本塁打、15打点をマークし、一塁手部門でベストナインを2季連続で受賞。同夏には大学日本代表にも選ばれた。3年秋からは不振に陥(おちい)ったが、4年秋にはリーグ6位となって迎えた拓殖大との一部二部入れ替え戦2回戦で流れを引き寄せるソロ本塁打を放ち、チームを二部降格の危機から救っている。