雨空予報も何のその、くっきりと霊峰、大山(だいせん)が望めた。13、14両日に広島主催ゲームで行われた鳥取・米子のどらドラパーク米子2連戦。見どころのひとつが、両チームの守備にあった。
阪神園芸の芸術的な整備に支えられる甲子園とは違い、ただでさえナインには慣れない地方球場。高代内野守備走塁コーチは一般論として難しさを語った。素人考えで慎重になって深めの守備位置を取るとばかり思っていたが「むしろ逆。浅めに守ってイレギュラーする前にさばかないと。常に前へ前へ」。
実際、どらドラパーク米子の内野を覆う美しい黒土にも、若干の“異変”があった。1990年の完成当時は地元大山産を用いていたという黒土。だが、プロ野球の公式戦は4年ぶりとあって土を入れ替えたところ「締まりすぎてしまった面もある」と球場関係者。直前の週に雨が続き、「雨降って地固まる」不運にも見舞われた。
当然、硬いグラウンドでは打球が速くなり、対応時間が少なくなる。それでも阪神ナインは大和、鳥谷の二遊間を中心に2試合でゴロ由来の併殺を6個奪い、不安は感じさせなかった。
それ以上に印象深かったのが、野性的な守備が光る広島の二塁手、菊池。昨季はゴールデングラブ賞に加え、最多補殺の新記録528を樹立している。
阪神が延長十二回にサヨナラ負けした13日は、福留の痛烈な二遊間の当たりに跳びつけば、今成のぼてぼてのゴロに猛ダッシュして素早く一塁に転送。「(地方球場でも)いつも通りですね。気にはなるけど、気にしてたら仕方ないですし。感性を信じる? そんな感じですかね」。阪神の勢いを封じた2つのビッグプレー。お見事というしかないが、虎党には実に厄介な存在だ。(坂井朝彦)