ようやく重い腰を上げた。
阪神が11日、育成選手の伊藤和雄(24)を支配下登録した。3ケタの背番号「117」から「92」に変更となった右腕は早速、一軍に合流。この日の巨人戦での登板はなかったが、「ずっと這い上がろうと思ってやってきた。背番号92は(元阪神の守護神の)藤川球児さんもつけていた番号だし、直球で攻めて球児さんみたいになりたい」と、意気込みを語った。
それにしても遅すぎる昇格だ。11年のドラフト4位で東京国際大から入団した伊藤は昨季、右肘痛の影響で二軍暮らしが続き、12試合登板で1勝1敗、防御率11.57に終わった。
■動かなかったフロント、現場
オフに育成に降格させられて迎えた今季、二軍練習試合、教育リーグの6試合で14イニング23奪三振と好投。オープン戦は3試合に登板し、4イニングを無失点8奪三振と結果を残していた。
どの若手よりも輝いていた育成右腕に周囲からは、「すぐにでも支配下登録すべき」という声が上がっていた。
「でも、フロント、現場はなかなか動かなかった。育成にしたばかりですぐに支配下に登録すれば、どこに目をつけていたんだと眼力に疑問符がつく。メンツが丸つぶれでした。だから、中村GM、和田監督は報道陣から伊藤の支配下登録について聞かれても、『良い悪いだけじゃなく、バランスを考えて』(和田監督)などと、苦しい弁明をしていた。
だから、伊藤が開幕直前に右肩の張りを訴えた時、『支配下登録のタイミングをずらすために、4日間で3試合とキツキツの登板をさせて、肩をおかしくさせようとしたのではないか』といぶかる声すら上がったほどです」(マスコミ関係者)
伊藤本人も、育成に落とされたことで発奮した部分はあっただろう。
「ただ、それだけでいきなりいいボールが投げられるほど、プロの世界は甘くない。何たって大卒とはいってもプロ入りして2年。そもそも肘の状態を丁寧に見ていれば、育成に落とすような選手じゃなかった。編成としては、FA選手の補強を考えて、支配下選手枠を空けたかったんだろう。結局、獲得を目指した中田賢一も鶴岡慎也も、ソフトバンクに取られている。編成の失敗だと言われても仕方がない」(阪神OB)
編成に関わった面々は伊藤に「参りました!」と頭を下げる日が来るか。