記念すべきプロ初勝利にも、お立ち台に上がった楽天の森の表情は神妙だった。「あいつが抹消されて僕が入った。あいつのためにも勝ちたかった」。その“あいつ”とは、結果を残せずに自らと入れ替わる形でこの日出場選手登録を外れた1学年後輩の松井裕。後輩の無念さをボールに込めた投球は、六回途中1失点の好投で結実した。
184センチ、75キロの細身の体ながら、切れのある直球と落差の大きいカーブで緩急を生かした。ただ、「自分の中でバタバタしてしまい、フォームを見失ってしまった」という六回は2死から適時打を浴びてマウンドを譲ったが、結果は最少失点の1失点。若き左腕の力投に応えようと、打線も12安打と奮起した。
2013年、東福岡高からドラフト1位で入団。昨季は1軍での登板機会はなかったが、今季は春季キャンプから1軍に抜擢され、松井裕とともに汗を流した。同じドラフト1位、同じ左腕と共通項が多い2人。「あいつも(2軍で)頑張ると思う。それまで自分も頑張る」と懸命に腕を振り続けた。
星野監督は「あいつら(松井裕、森)に投げさせると疲れるよ」と苦笑いを浮かべたが、期待を込めて左腕にエールを送った。「この1勝でどう変わってくるか楽しみだな」。田中将が抜けて盤石とは言いがたい先発陣に、将来性ある19歳が加わった。(浅野英介)