4連勝中と勢いにのる相撲巧者、安美錦を寄せ付けなかった。立ち合いはほぼ互角でも、稀勢の里は慌てない。相手を正面に置き、もろ手突きを繰り出してまわしに触れさせず。終始危なげなく土俵の外へ押し出した。「余計だった」という前日の黒星から一転、落ち着きを取り戻し「これからです」と息をついた。
右足親指を負傷し、ことし初場所は大関になって初めて負け越し。かど番の春場所も勝ち越しはしたが、二桁には届かなかった。もがき苦しむ間に、自身より後に大関になった鶴竜は初の綱取り場所だった先場所で優勝し、横綱へ昇進した。
和製横綱誕生の期待を一身に背負う27歳は「やっぱり悔しいし、自分の責任でもある。これをきっかけにまたイチから上を目指す」と誓いを新たにした。
弱みを見せたくない思いもあり、もともと嫌うテーピングはいまも親指に巻かれている。状態は万全ではないが、場所前には関取衆との申し合いを積極的にこなし、「ことしで一番調子が良い」と手応えをにじませていた。
4日目に早くも土がついたが、まだ前半戦。勝ちっ放しは早くも白鵬一人となっただけに、これ以上離されるわけにはいかない。「一日一日ですよ。やることは変わらないから」。短い言葉に気迫を込めた。(藤原翔)