調子を上げ始めた矢先に人種差別騒動に巻き込まれたのがメッツの松坂大輔(33)だ。
ダン・ワーセン投手コーチが、松坂の通訳である日系米国人のジェフ・カトラー氏を中国系移民の蔑称である「チャイナマン」と呼びかけ、居合わせた米紙の記者たちが問題視。複数の米メディアがこぞって、「差別発言ではないのか」と騒ぎ立てた。ワーセン投手コーチは「冗談のつもりで悪気はなかった」と弁明。アルダーソンGMが謝罪の談話を発表する事態に発展した。
今回、米メディアにやり玉に挙げられたこのワーセン投手コーチ、差別的な思考の持ち主ではなく、アジアや中南米出身の選手からの評判は決して悪くない。依然としてメジャーでは白人コーチが米国出身以外の選手を色メガネで見る傾向にあるものの、ワーセン投手コーチは公平なことで知られる。
投手に対しては国籍はもちろん、ベテラン、若手とも同等に扱う。投手に問題があって打たれた場合などは、ベテランでも容赦なくベンチで叱責する。
選手の体調管理にも厳しく目を光らせており、チームの方針もあってシーズン中は投手に定期的なメディカルチェックを義務付けている。
日本人投手との関わりも深く、タイガース時代(00年)には野茂、ドジャース時代は斎藤(現楽天)らを指導した。昨季終了後、契約が切れた松坂の残留を球団に要望したのは、このワーセン投手コーチだった。
高橋尚成(現DeNA)がメッツでプレーした際、捕手との呼吸が合ってないと見抜かれ、「メジャーでは投手主導で配球を組み立てるものだ。打たれたら、それは自分の責任」と諭されたという。
一緒にゴルフに行く仲のワーセン投手コーチの人柄を理解しているからだろう。今回の件に関して松坂は「本人も謝罪していることだし、このことで関係がこじれることはない」と話している。
今季、完全復活を目指す松坂にとっては“差別発言コーチ”の存在はむしろ心強い。