レース日和にはほど遠い悪天候のなか、メーン・スタンドはぎっしり埋まっていた。そんな熱いファンへのミルコからのメッセージが、コパノリチャードでゴールを駆け抜けた直後の、両手を水平に大きく広げる“飛行機ポーズ”だった。
「こんな天気でもたくさんのファンが応援してくれたうれしさを表したかった。ペナルティー(過怠金10万円)は仕方ないけど、気持ちも分かってほしい」
簡単な会話なら日本語OK。日本の競馬に馴染み、ファンが喜ぶパフォーマンスを心掛ける。昨年不合格だったJRA騎手免許試験に、今年もトライするつもりだ。そんな日本びいきの陽気なイタリアンに、節目のJRA・GI10勝目は大きなパワーになったはず。
「去年は合格できなかった。でも、ネバー・ギブアップ。次の試験へ、力を与えてもらった気がするね」
不合格になった当初は肩が落ち気味だったが、今は勝つことに集中している。リチャードとは初コンビだが、Vへの手応えをつかんでいたのは26日の坂路。「重い馬場でもいい動きだったから、きょうのような馬場でも力は出せると思った。距離は短いと思っていたけど、それを雨が助けてくれた」とニッコリ。
初の6Fを難なくクリアさせ、これまでの逃げスタイルを控える形に変えての圧勝は、さすがミルコならでは。前週のフジテレビ賞スプリングSも、出負けしたロサギガンティアを焦らずに勝たせた腕は見事だった。
思えば3年前、東日本大震災直後のドバイワールドCをヴィクトワールピサで勝ったとき、心は“日本人”だった。もう日本の競馬は、ミルコのパフォーマンスを抜きには語れない。(南庄司)