いよいよ1億5500万ドル(160億円)右腕、田中将大投手(25)のメジャー1年目が始まった。ヤンキースは1日(日本時間2日)、敵地ヒューストンでのアストロズ戦で開幕を迎え、2-6で完敗した。4日(同5日)のブルージェイズ戦(トロント)でデビューを控えた田中に対する期待は高まるばかりで、地元報道は過熱の一途。ピューリッツァー賞を受賞した米ベテラン記者が「田中の中には2人の田中がいる」と伝えたり、田中がチームメートにキャンディーを配って、人気者になっているエピソードなどが報道されている。
開幕戦はエース左腕のサバシアが乱調で、序盤に失点し、黒星スタートとなった。イチロー外野手(40)は出番がなかった。
田中は試合前セレモニーで感慨にふけるような表情。しかし、始球式で伝説の奪三振王、ノーラン・ライアン氏(67)=現アストロズ・エグゼクティブ・アドバイザー=が暴投したのをみて爆笑した。
■田中は二重人格?!
今季限りでの引退を表明している主将、ジーターがヤンキースの大きな話題だが、田中に関する報道はこれを上回るほど熱を帯びている。
開幕前、田中の特集を掲載したのがニューヨーク・タイムズ紙。取材のために来日したバリー・ベアラク記者(64)は、2002年、アフガニスタンの戦争と貧困を描いてピューリッツァー賞を受賞し、コロンビア大学の教授として大学院でジャーナリズムも教えているベテランだ。
同記者は田中の小中高校時代の関係者を取材し、田中が剛腕投手に成長した秘密に迫り、田中の少年時代について次のように伝えている。
「友人たちの目には、1人の人間の中に2人の人間が入っているように見えた。普段は恥ずかしがり屋で、とてもいい人だが、試合になると別人のように闘争心むき出しとなり、投げるたびにうなり声をあげ、三振を奪うと拳を突き出した。味方の選手の緩慢なプレーには容赦なく罵声を浴びせるので皆田中を怖がった」
■新車とGPS
ニューヨーク・デーリー・ニューズ紙は先輩・黒田博樹投手の存在を大きく取り上げている。
「田中がニューヨークの輝く新車なら、黒田は信頼の置けるGPS」と例えている。「黒田が広島からドジャースに移籍し、ニューヨークでも活躍した経験から学んだ教訓は、ロスチャイルド投手コーチやジラルディ監督でも田中に教えることができない特別なものだ」と評している。
「日々の生活の中から起きる細々な田中の疑問に黒田は丁寧に答え続けたおかげで、田中は驚くべきスピードでチームに溶け込んだ」と同紙。
田中は「ここまで黒田さんが僕にしてくれたことは言葉では言い表せない」と感謝している。
■森永ハイチュウの威力
ウォールストリート・ジャーナル紙は、英語の苦手な田中だが、「チームメートへの気遣いがあることから仲間たちからは人気がある」と報じている。その気遣いが自分のロッカー脇に置いた日本製キャンディーだったという。
田中は森永製菓の「ハイチュウ」が入った段ボール箱を広げ「For Everybody」(皆さんで食べてください)と黒マジックで書き込んだ。これがチームメートたちに大好評だったそうだ。
「田中はあまりイチローと話している様子はないが、日本人メディアや他の選手たちとはよく交流しており、特にリリーフ投手陣とは仲がいい。それはハイチュウを振る舞っているからだ。ハイチュウは米国でも買えるが、田中が好んでいるレモン味は手に入らない。これが仲間たちを熱狂させているのだ」
超高給取りでプライドの高い一匹おおかみが多いヤンキース。だからこそ、チームメートと知り合いになって仲良くやっていくことは1年を通じて野球をする上でとても有利。「ハイチュウ効果は抜群」とデーリー・ニューズ紙も強調している。