黒田博樹(39)とイチロー(40)。ともにヤンキースに所属して、年齢もひとつしか違わないのに、その境遇は天と地ほどの開きがある。
先発2番手の右腕エースで、年俸16億円の黒田に対し、イチローは外野の控えのそのまた控えという扱い。本人はオフのトレーニングや調整がうまくいったのか、今季に自信をもっているといわれるものの、キャンプで出遅れたソリアーノにメドが立てばすぐさま放出されるらしい。
メジャーは特に35歳を過ぎた野手に対してシビアだ。
松井秀喜が35歳でヤンキースとの再契約を見送られたように、中でも長距離打者はその年齢を境にパワーダウンするというのはほぼ定説になっている。
■野手で評価ダウンは致命傷
イチローはしかし、ヒットメーカーだ。安打にはパワーより技術が重要なのに、それでもヤンキースでは勝負する機会さえ与えられない。
アメリカ野球愛好会代表補佐の鈴村裕輔氏がこう言った。
「先発は好不調の波があっても猶予期間があるといいますか、六回まで抑えれば評価されます。40歳付近でもバリバリ働いてる投手がゴロゴロいますけど、野手に関してはシビアですね。開幕ダッシュに失敗しただけで監督やGMが責任を追及されるように、極端な話、1試合1試合が勝負になってしまう。それでも急激に力が衰えるパワーヒッターに比べ、アベレージヒッターは力が落ちる曲線が比較的緩やかだといわれています。中でもイチローはビル・ジェームズら統計学の専門家ですら、衰えはかなり緩やかだろうと予想していました。けれども、意外にも早く見切りを付けられてしまった。いまや完全に賞味期限切れ、ヤンキースでレギュラーに準じる扱いを受けているのがむしろ不思議なくらいです。本人にどれだけ自信があっても、野手で一度、失格の烙印を押されてしまうと評価を覆すのは容易ではありません」
メジャーで長く稼ぎたかったら投手に限るということだ。
黒田は12日(日本時間13日)のタイガース戦に登板。強力打線に立ち上がりからつかまり、一回に4点を失うなど、3回3分の2を10安打6失点だった。イチローは「1番・左翼」で出場し、3打数無安打。マイナー契約の建山は1回を1安打無失点、1三振。
▽黒田の話「いいボールがひとつもなかった。ダメな中で修正しつつ投げなければいけないのに、ボールが真ん中に集まってしまった」