センバツ初日となる21日の第3試合で履正社(大阪)と対戦する小山台高校(東京)は、都立高校として初のセンバツ出場となる。
昨秋の都大会は早実、堀越など私学の強豪校を破ってベスト8入り。「平日の練習時間は90分」「学校のグラウンド使用は週3」など極端に制約の多い練習環境下で力をつけ、「21世紀枠」で選出された。都内屈指の進学校でもある「都立の星」を率いる福嶋正信監督(58)に話を聞いた。
――グラウンドは「60メートル×90メートル」と狭く、練習時間も限られています。制約が多いですね。
「ウチは、甲子園を狙う高校で『日本一、練習量が少ない』と自負してます。夕方の5時が下校時間だから、アップもクールダウンもありません。授業が終わったら、教室から校庭までダッシュです。それでケガをしても仕方ないと割り切ってます。グラウンドが使えない時は学校の駐車場などでバドミントンのシャトルを打ったり、玄関前のガラス戸を使ってフォームチェックや守備練習もやる。招待試合で他校に行く時は、アップ代わりに最寄り駅から学校までダッシュです。1日4試合やれるように、試合前のボール回しやシートノックを省くこともあります」
――マウンドもバックネットもないと聞きました。
「いつも練習前に、メジャーを使って白線を引き、ダイヤモンドをつくることから活動が始まる。水たまりがあるとそれをよけたり。学校でフリー打撃ができないから、麻布高校の多摩川グラウンドを借りるなどしていますが、甲子園出場メンバーでフリー打撃をやったのは、去年の4月から20回程度。今の1年生の補欠組は2、3回しかありません」
――部員に勉強時間を設けているとか。
「朝練は野球の練習が週3日で30分間だけ。残りの3日は勉強です。甲子園の遠征中も宿舎でみんな勉強してますよ。ウチは春休みの宿題が多いですからね(笑い)」
■「そもそも勉強できない生徒に野球はやらせない」
――進学校だけに難関大学の合格者が多い。
「(合格者のメモを見ながら)今年も現役浪人合わせて、筑波大が2人、横国大が2人、早慶が7人、明治も立教……。医学部もいます。過去には東大合格もいます。甲子園に出る野球部としてはこれも日本一でしょう。塾や予備校に通うのはごくわずか。学校の授業をしっかり受けていれば問題ない。そもそも勉強ができない生徒に野球をやらせませんから(笑い)」
――それでいて昨秋は強豪の私学を次々と倒しました。
「これまでたくさん勝ってます。堀越、早実、修徳、桜美林、関東一……。東海大菅生も。頭脳と集中力は負けていない。練習も勉強も短い時間で上達しようと思えば、集中力が必要。作戦面でも無死一塁で強攻させたり、セオリーを度外視する時もあります。普段から生徒には『毎日を精いっぱいやれ』と言っている。部活も勉強も学校行事も全部。普段の生活の中に野球がある、という気構えを持って心を鍛えていけば、本当の技術が身につくはず。私学のように寮があって練習設備が整っていて、長い時間ビシビシ鍛え上げても、精神面が伴わなければ技術は進歩しないと思う。あとは相手が2番手投手を先発させるなど、ナメてくれるからじゃないですか(笑い)」