ボクシングの世界ボクシング評議会(WBC)ライトフライ級で、日本最速の6戦で王座に就いた井上尚弥(大橋)が試合から一夜明けた7日、フライ級で3度目の防衛を果たした八重樫東(同)らとともに横浜市内で会見し、「家に帰って試合の映像を見て実感がわいてきた」と改めて喜びをかみしめた。
辰吉丈一郎や具志堅用高らを上回る20歳の偉業を、所属ジムの大橋秀行会長は「浪漫」と表現。最速記録の更新は、これまで“同門”のボクサーが挑んで果たせなかった悲願だった。
大橋会長が現役時代に所属したヨネクラジム会長の米倉健司は1959年、世界フライ級王者のパスカル・ペレス(アルゼンチン)に挑戦するも失敗。大橋会長も86年にWBCライトフライ級王者の張正九(韓国)に勝てず。弟子の八重樫も2007年にWBC世界ミニマム級王者のイーグル京和に敗れた。
3人とも7戦目で世界王者奪取に挑んで、果たせなかった。だからこそ井上の6戦目での王座奪取に特別な思いが募る。大橋会長は「米倉会長の挑戦から半世紀以上。一門の歴史を塗り替えてくれた」と目を細める。
見事に新王者となった井上は「記録が長く残るなら光栄」と胸を張り、「今後はみなさんの記憶に残る試合をしたい」とさらなる飛躍を見据えた。(藤原翔)