「ほら、ね。だから、言ったでしょ」とは、広島の某投手。
9日、同僚の今村が巨人の村田に打たれた、東京ドーム左翼最深部の天井にブチ当たるという超特大の本塁打を振り返り、「そりゃ、村田さんのパワーは凄い。それにしたって、あそこまで飛ぶのは異常です。だいたい、今年は最初からおかしいんですよ。6日のオリックスと西武の試合ではファウルフライが2度も京セラドーム大阪の天井に当たったんでしょ。絶対にボールが飛ぶようになってる。間違いないですよ」と試合後に口角泡を飛ばしていたのだ。
これが、その通りだった。10日、NPBが緊急会見。今季の一軍公式戦で使用している統一球が、アグリーメントに定められた反発係数の上限値を上回っている事実を明らかにしたのだ。NPBによれば、3月29日の開幕2戦目にセ・パ6球場でボールの抜き打ち検査をしたところ、反発係数の平均が0.426であることが判明。5球場で上限の0.4234を超える“違反球”が使われていたというのである。実際、今季は各球場でやたらと本塁打が乱れ飛んでいた。10日の試合だけでも、6球場で13本塁打。ここまで68試合を消化して、110本もの一発が出ている。
「ボールが飛びすぎるとの声が選手から噴出し、秘密裏に統一球の反発係数を上げていたことが発覚した昨年ですら、同時期の本塁打数は76本。ちなみに、飛ばないとされた統一球を使っていた一昨年はこの時期に45本塁打だった。今年は早くもその倍以上の数になっているのですから、『飛ぶボール』というより、『飛び過ぎるボール』になっている。投手はたまりません」(球界関係者)
■巨人はここまで12球団最多本塁打
NPBの井原事務局長は「速やかに原因を究明して、定められた規格の球にしたい」と製造元のミズノに指示したというが、そもそも昨年の統一球騒動はミズノが基準を下回るボールを供給していたのがきっかけ。NPBがそれを公表せず、反発係数を上げたボールを作らせたことで、大騒動に発展した。
「11年に統一球が導入されるにあたり、ボールの供給メーカーがそれまでの4社からミズノ1社になった。契約4年目を迎え、1社独占の弊害が出ているとの声もある。NPBが来年初めにも、供給メーカーを決めるコンペを開く準備をしているのも、そういうことでしょう。コンペには、大リーグとWBCの公認球をつくる米ローリングス社が参加するという話も出てきた。そもそも、統一球が導入されたのは、WBCなど国際大会に戸惑わないため。この際、大リーグ使用球を導入すればいいんです」
とは、前出の球界関係者。もっともな話だ。本塁打は野球の華とか言って、昨年からまたぞろ大味な試合が増えた。ボールが飛ぶようになって、得するのは強力打線を擁する一部の球団だけ。昨年、ボールが替わった途端に独走優勝した巨人がその筆頭で、今年もここまで12球団最多の15本塁打を放って早くも首位に立っているだけに、なおさらである。