「よけいなことはしてくれるな」ということだろう。
今季オフのメジャー移籍が濃厚な広島・前田健太(25)が、2月のキャンプから新球の「スプリット・フィンガード・ファストボール(以下スプリット)」の習得に取り組んでいる。
この変化球は、直球の軌道からホームベース上で微妙に落ちる球だ。フォークボールより落差がない分、スピードがあるので打者は見極めが難しい。ヤンキースの田中も武器にしているボールだ。
田中はこの変化球で昨季公式戦24勝無敗を成し遂げ、メジャーでも高い評価を得た。落ちる変化球を持っていないマエケンは、このボールを手の内に入れようと躍起なのだが、握りや指のかかりに違和感があるようでなかなか結果が出ない。
■誰も言い出せない…
9日のオープン戦初登板(対ヤクルト)では、相手打線にスプリットを狙われ3回7安打6失点と炎上。15日のロッテ戦では逆にそのスプリットを「封印」して5回1失点の好投を見せたことで、「まずは足元を見て欲しい」との声がチーム内から出てきた。
「マエケンがメジャー移籍に向けてスプリットをマスターしたい気持ちはみな理解している。でも、その前に今季のウチ(広島)はリーグ優勝という目標がある。彼が活躍しない限り、その夢は実現しないわけですから」(関係者)
さらに気になるのが、生命線ともいうべきスライダーへの影響だ。
マエケンのスライダーは、例えば左打者なら外角のボールゾーンからストライクゾーンに鋭く切れ込んでくる。ところが、これまで対戦した打者によれば「昨年までの曲がり方ではない」と口を揃える。
「人さし指と中指でボールを挟むスプリットの多投による弊害なのか、とにかく、今のままではスライダーだっておかしくなる。『もうスプリットはあきらめてよ』というのがナインの本音なんです。誰もそれを言いだせないのですが……」と、前出の関係者は顔を曇らせている。