【勝者のワザ】風の川奈を制したのは、ツアー3年目のフェービー・ヤオだった。台湾生まれの21歳。最終日に69とスコアを伸ばしての逆転Vであった。
台湾選手といえば、風の中でのプレーに強い。川奈の海風も「台湾では、このくらいの風ならいつものこと」と意に介するふうもなく、低い弾道のショットで攻略していった。
最終日の16番パー5。左手に相模湾を見下ろす名物ホールで、ヤオは事実上のウイニングショットを放った。左ラフからの第3打である。ピンまで92ヤード。通常ならウエッジでぴったりの距離だったが、飛球線に松の枝が張り出していて、ボールを高く打ち出せない状況であった。
ヤオのクラブ選択は7番アイアン。ロフトの少ないクラブで低い弾道のショットを打ち、枝の下をくぐらせてグリーン手前から転がし上げていく方法でピンそば30センチに寄せてみせた。“技あり”のバーディーで、ツアー初優勝を決定的なものにした。
ヤオの選択したショットは、花道を使える状況や、グリーン奥に立っているピンに寄せたい状況でも応用できる。
大きなスイングをするわけではないので、スタンスは狭く、ボール位置は右足の前。小さな振り幅で、ボールをダウンブローに打ち抜く。アマチュアゴルファーにとっても、難しいショットではないのだが、なぜかダフリ、トップといったミスも出やすい。
成功させるには、いくつかの約束事がある。アドレスもそのひとつ。そして、そのセットアップからの動きにも大事なポイントがある。
“トップスイングまで自分で作るな”
ちょっと長いが、これがキーワードだ。小さなスイング幅でも、手打ちは避けたい。そこで、体をターンさせることで腕、クラブを連動させることになるのだが、クラブヘッドが自分の想定したトップスイングの位置に上がるまで体をターンさせてしまうと、ダウンスイングで上半身が突っ込んでいきやすくなる。この動きが、ミスを招くのだ。
グリップをソフトに握り、体のターンで腕、クラブを連動させるのだが、ヘッドがトップスイングのポジションに至る前に、ターンは止める。そして、その態勢で、腕、クラブがさらに動き続けてトップの位置にたどりつくのを待つ。これが大切で、体のターンを止めても、腕、クラブは惰性でまだ動き続けることを体感しておこう。
トップスイングの位置におさまるのを待って、そこからまた逆方向に体をターンさせて腕、クラブをリードしていく。待つ。これが、トップスイングから切り返すまでの“間”で、ゆったりと落ち着いたスイングができる。
■Phoebe Yao 1992年12月15日生まれ。台湾・台北市出身。母の友人の影響で10歳からゴルフを始める。15歳でナショナルチーム入り。2010年台湾アマ優勝。11年にプロ転向し、同年の日本女子ツアーQTを経て、翌12年から本格参戦。13年にリゾートトラストレディスで4位。国立体育大学在学中。164センチ、60キロ。